こんにちは
地震から3週間以上がたち、落ち着きを取り戻しつつある北海道ですが、週末から週明け月曜日にかけて台風24号が近づいているとの事…
3週間前の台風21号からの北海道胆振東部地震の記憶も新しい中、またまたなんだか不安です。
私の勤務している学校では地震で延期になった宿泊行事も週明けから予定されているのに心配です。子供達もそわそわしているだろうなぁ…
さて、今年度、授業実践を自分で実際に行うようになってから約半年が過ぎます。
以前授業観察者として子どもの学びを見取っていた時と違って、自分で授業を進めていると「進める」というところに力が使われてしまい、
肝心の「子どもの学び」の事実を、なかなか見取る事が出来ない
ということが課題でした。
そんな中ではありますが、繰り返し子どもの姿を見ているうちに
少しずつ見えてくる事
があります。
いくつかのエピソードをあげてみたいと思います。
静かなアクティブラーナーU君のエピソード
U君は物静かな子です。
生真面目で教師が何か指示を出すと淡々とやり遂げる子です。
なので成績もそこそこ良く、教師からみると、「可もなく不可もない」ごく普通にできるおとなしい子。
これといったエピソードはあまり思い起こせないタイプです。
実際担任の先生も
「U君ですか?ちょっと固くて、おとなしいんですよねー。もっと発表出来るようになるといいのですけどね。」
と評価していました。
確かに、U君は理解していても手を挙げて進んで発表する事はありません。いつも早々と指示を終え、じっと次の指示を待っています。
そんなU君が学び合いの授業で変わってきたのは、
隣のKさんが「ここ分かんない、U君教えて!」としばしば尋ねるようになってからでした。
Kさんはあまり算数が得意ではないのですが、人と関わる事に屈託がありません。
しかも私の少人数教室では「友達の力を借りてでも分かるようになろう!」と推奨されているのでKさんにとって
隣のU君は頼もしいパートナー
です。
皆の前で発表するのは苦手なU君ですが、気心の知れたKさんには気軽に説明できます。
「…だから、こうなって、こうすれば答えが出るよ。」
「へー、なるほど!わかったわかった!」
「でもさ、ここは分かるけど、ここな何でこうなるの?」
とU君とKさんはいつも問題をめぐって議論するようになりました。
そうこうしているうちに、はじめは教えるばかりだったU君が
「えっ…どうしてだろう??」
と窮することもあるようになりました。
2人で
「ん〜〜…」と考えたり
時にはKさんが
「わかった、わかった、だからさあ、ね!」とU君に逆に教える場面も見られるようになってきました。
時には席の前後の子や他のグループの子も巻き込んで楽しそうに学び合う姿が見られるようになってきました。
U君はKさんだけでなく、いろいろな子たちに考えを伝える事が出来るようになってきました。
そんな授業時間を何時間か過ごしているうちに、U君は表情が格段に明るくなり、
始業前誰よりも早く少人数教室にやってきて、
「先生、今日は何やるの?難しい問題出してください!」
「算数、すっごい楽しいです!」
と笑顔で話しかけてくるようになりました。
シャイなU君の笑顔はとても素敵でした。
H小学校での少人数教室は単元ごとに子どもが入れ替わります。
単元がいくつか終了し、
しばらくぶりにU君がまた私の教室で授業を受ける事になりました。
U君からは、はじめの頃の固い表情は姿を消し、リラックスして学んでいます。
自分の課題が済むとすぐに周りへの気遣いをさりげなくはじめます。
彼が特に気にかけているのはB君です。
B君には学習の遅れがあり算数ではかけ算九九も覚えていないのでTTの先生が作ってくれた九九表を見ながら計算に取り組んでいます。
計算がややこしくなると、パニックになって投げ出してしまうこともあります。
この時の単元は
「整数の性質」でした。
子どもたちは、「倍数」「約数」や「最小公倍数」「最大公約数」、さらに「素数」などこれからの算数や数学の基礎となる整数の性質を学習します。
子どもたちのもつ素朴な生活の概念から離れ、メタ認知していかなくてはならない部分も多く、苦手な子にとっては
「何が何だかわからない。」
単元でもあります。
U君はさっさと自分の課題を終えるとK君に寄り添いました。
B君は行き詰まるとU君に尋ねながら進められるので落ち着いて取り組むことができました。
B君がやり始めると、U君はまた自分で問題をやり直したり、他の子に教えたりしていました。
授業も終盤になり、ノートの丸つけをしたり直しをしたりしていた私のところにB君がノートをもってきました。
筆圧の強い独特な字ですが、今日の課題の問題数の分だけ、しっかり答えが書いてありました。
見上げると
「できた!」と言うB君のドヤ顔があるではありませんか。笑
U君の関わりでやり方が分かったB君には、
この授業で大きな学びがあったようです。
一方、教える側に回わることが多かったU君の学びはどうだったのでしょうか。
彼のノートは課題をしっかりやり遂げた跡が残っています。
しかし彼にとってもう
「わかりきったこと。」をなぞっただけの授業であれば
彼にとっての「学びはなかった。」
授業だったことになってしまいます。
しかし
そうでなかったことが、彼が書いた単元のまとめの振り返りの記述からわかりました。
彼の振り返りにはこう書いてありました。
わかったことは、こんなにも数と数が共通しているということです。
「素数」を見つけることに興味をもちました。
もっとやってみたいです。
この単元は「倍数」「約数」や「最小公倍数」「最大公約数」、さらに「素数」などこれからの算数や数学の基礎となる「整数の性質」を学びます。
彼らがはじめて見るその言葉と意味。
それをただ教えるに必死だった自分。
そんな中で
しかし、U君は
「こんなにも数と数が共通している」ことに驚き
「素数」を見つける、深い深いテーマに興味を抱く
という数学の世界に開かれている学びを深めていたことに
私は感動してしまいました。
「深い学び」とは何か
という議論があちらこちらでなされています。
「学習規律」を整え、理解を促す
「集団での練り合い」の中で皆で深まる
という授業研究が巷では盛んなようです。
しかし、私は
一人一人の子が、課題に向き合い、
それについて他者と話したり、書き記したりということを数多くこなし、また課題に戻り自己の中でまた新たな気付きを生むことを繰り返す中で起きること
のではないか、
ということを
U君のような
静かなアクティブラーナーから
また、学ぶことができた
気がします。
静かなアクティブラーナーの他のエピソードを合わせてご覧ください。
普段の学びの風景。
頭を付き合わせ一緒に考えたり、一人で考えたりいろいろです。